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2019.12.24

  • Interview

理系出身の現場派ディレクターが行き当たりばったりから掴んだもの 【 Creators Interview #03×吉澤 美貴】

理系出身の現場派ディレクターが行き当たりばったりから掴んだもの 【 Creators Interview #03×吉澤 美貴】

DIRECTIONS社員インタビュー第3回目は、NHK Eテレで放送中の『シャキーン!』で活躍するディレクターの吉澤 美貴。意外な入社の経緯、独自のディレクター論や人生観まで、一歩踏み込んで聞いてみました。


 

Profile
吉澤美貴 吉澤  美貴 Miki  Yoshizawa
2006年より在籍/ファミコン部/ディレクター
1984年生まれ。青山学院大学理工学部化学科卒業。魚座のA型。
現在、NHK Eテレ「シャキーン!」を担当。
他、「マリーの知っとこ!ジャポン」「ムジカ・ピッコリーノ」「東京カワイイ★TV」「こびと観察入門」「デジタル・スタジアム」など。

古舘勝義 古舘 勝義    Katsuyoshi Furudate
2007年より在籍/コネクティブ ラボ 部長
NHK Eテレ「ビットワールド」日本テレビ「アイキャラ」などでディレクターを
担当。YouTubeでもコマ撮りアニメ「こびとす」を開発し、累計視聴数3900万回を達成。現在、某キャラクターコンテンツの体験型イベントを準備中。

 

kizuka 木塚 幸代  Yukiyo Kizuka
2018年より在籍/コネクティブ ラボ /webディレクター 兼 広報(仮)
IT系企業を10年間渡り歩き、なぜかDIRECTIONSに入社する。
ランニングで腹の肉が指2.5本分くらい減りました。好きなラジオ番組はJ-WAVEの「ALL Good FRIDAY」。好きな芸能人はLiLiCo。

 

 

 


【目次】
1.手堅い内定を蹴って映像業界を選んだ理由
2.大変そうだけど、内側に行きたかった
3.ディレクターは客観性を持つことが大事
4.ハンバート ハンバート「はるかなる世界」のMV裏話
5.被験者=自分「人生を人体実験だと思ってる」


これまでどおり社内の会議室で行うはずだった今回のインタビュー。
しかし前日に、
「公園でやりませんか?」
と、吉澤さんから提案が…

え!?
明日の天気…

、ヽ`、ヽ`大雨です`、ヽ`
天気予報をお伝えして再検討してもらったら
なぜか渋谷のヒカリエに集合することに…

木塚今回のインタビュー、何で社外でやろうと思ったんですか?

吉澤: 抜け感が欲しくて、
社内で話してると身内の話ばっかりになりそうだから。関係ない人が見ても耐え得るインタビューにしなきゃいけないっていう、私なりの責任感ですね。
パブリック感、大事かなって(笑)

木塚: パブリック感!?分かるような、分からないような(笑)

 

手堅い内定を蹴って映像業界を選んだ理由


古舘 吉澤さんは、どういうきっかけで映像業界へ進もうと思ったんですか?

吉澤: 大学では理工学部に進学して、バイオサイエンスの研究者になりたかったんですけど、実験って基本的には同じことの繰り返しで、それが辛くなっちゃって…。知識や学問として楽しいっていうのと、それを研究するっていうのは違うんだなって気づいて。就活では現実的な判断をして、ITコンサルの会社に内定もらってたんです。でも、懇親会に行ったらなんか急に怖くなっちゃって…
「やばい、私この平坦な道をこれから50年ぐらい進んでいくのか、退屈過ぎて死んじゃうんじゃないかな…」って、自分の一生が見えたような気がしたんです。それで内定を辞退して、バイトでも薄給でもなんでもいいからちゃんと山と谷がある仕事がいいと思って探してたら、某アルバイト情報サイトにDIRECTIONSの求人が紛れていて、エントリーして面接に行ったんです。

miki_yoshizawa
大学3年@屋久島

そしたら「ちょうど明日、収録があるから見においでよ」って言われて、見学のつもりで行ったら、いきなり「この子、新人です」って局のエグゼクティブプロデューサーに紹介されて(笑)なんとなく断れなくてなんとなく入っちゃった(笑)

 

大変そうだけど、内側に行きたかった


miki_yoshizawa

木塚その場の流れで入社して10年以上になるわけですが、「もう辞めたい…」と思ったことは?

吉澤: それはいっぱいあります。でも、嫌なことがあっても忘れちゃうんですよね。それにルートが保留になったまま次に行くのが気持ち悪いんです。とりあえず、今掘ってるトンネルがあるなら貫通させたい。「私はもうここではやることはないし、伸びしろもない」ってならないと次に行けない性格で。ただ、その性格のせいでトンネルだらけなんですよ。人生の地図、散らかりすぎ(笑)

木塚 エンタメ業界で働こうと思ったきっかけって何だったんですか?

吉澤: これっていうのは無いんですけど、テレビっ子だったので『ダウンタウンのごっつええ感じ』とか『ボキャブラ天国』はすごい観てました。ああいうバラエティ番組だと平気でADが出てくるじゃないですか。だからADというものの想像はついていて。 その頃から、大変そうだけど、私も内側に行きたいなと思ってました。

古舘番組にさらされたりしながら汗かいてるADがいいなと?

吉澤: 外から見るよりも、中に入って酸いも甘いもどっぷり浴びたかった。体感が欲しかったんですよね。どっちかというと大人しい方だったし、学校のクラスでも、外から見ていることの方が多かったから。渦中の人であることはしんどいんだけど、私にとってはその方が安心なことに思えた。何もないとヤキモキしちゃって、体感として良いも悪いも全部手応えがある方が健全だなって。今でもやっぱり現場主義だし、口だけで仕事してる人が本当に好きじゃない(笑)

miki_yoshizawa
小2の夏休み。母と姉と。超内弁慶のため、カメラを向けられると真顔になる。

古舘『デジタル・スタジアム』『東京カワイイTV』『ムジカ・ピッコリーノ』『マリーの知っとこ!ジャポン』『シャキーン!』など色々な番組でディレクターをしてきたじゃないですか。どうやって関わる番組を選んできたんですか?

吉澤: 選んでないです。こだわりがないです。

古舘: 選択肢があって、取るか取らないかって聞かれたら、必ず取るっていう感じなのかな?

吉澤: 「これやる?」って言われたら「やる」って言っちゃうところがありますね。「次こういうハードル飛んでみる?」って言われたら「はい、飛んでみます」ってなっちゃうんですよ。こういうこと言うとドMだと思われますね。もしくはサイコパス。どっちも違います。
でも、とりあえず自分の持ってるリソース全部使い切ったほうが得じゃないですか。心と体と脳みそ、全部使い切ってから死にたいんですよ。余らせてても意味ないから。よりお得なほうを選んでるだけです、私。

 

ディレクターは客観性を持つことが大事


miki_yoshizawa
2011年。ディレクター2年目の頃。

古舘吉澤さんがディレクターをする上で気をつけていることってどんなことですか?

吉澤: この仕事って客観性がすごい大事だと思うんです。でも、最初の頃は全然客観性がなくてすごい苦労したんです。試写のたびに当時のプロデューサー(DIRECTIONS長江社長)に、「よっしー、感情移入し過ぎてて、観てる人がついてけないよ」って毎回言われてました。客観的になるって、私は、それは人間の心を捨てることだと思ってたんで、すごい抵抗してたんですけど、やっぱりディレクターになるには、主観から客観に、どこかでブレイクスルーしなきゃいけないんですよね。

古舘吉澤さんもどこかでブレイクスルーをしたってこと?

吉澤: 何がきっかけだったのかは分かんないですけどね。「演出」って自分の気持ちとは関係なく、今のこの陽射しエモいなとか、そういうことに気づけなきゃいけない。ある種、他人事として。エモさを全身で感じていたら、それを演出として使える頭にならないでしょう。だって実際に演出に取り入れるなら、そういう日差しが出るタイミングを待つとか、照明さんにそういう照明を作ってもらわなきゃいけないわけだから。それがどういう日差しなのかを人に説明できなきゃいけない。

古舘: 陽射しが、エモさを伝えるための部品になり得るかを、冷静に判断しないといけないし。

吉澤: そうそう。それは何で出来るようになったんだろう?まぁまだまだ不十分だけど。単に大人になったのかな、私が(笑)昔は全てを真に受けてましたよね。全てのことに一喜一憂してたし、うまく行かなくてトイレで泣いたり、もう息ができないくらい笑い転げたり、全部自分事として嬉しかったり楽しかったりしてたから。今もう、そんなことしてられないですもん(笑)やっぱ相当客観性は身に付いてますよ。

古舘それって経験的に言うと、どのぐらいのタイミング?

吉澤: たぶんディレクターになって3年目ぐらい。ようやく、自分がこういうふうに撮れたらいいなと思うとおりに撮れた回があったんですよ。そこかな。客観的である=優しくない、ってことではないから。そこを勘違いしてたな、と。

 

ハンバート ハンバート「はるかなる世界」のMV裏話


miki_yoshizawa

木塚最近制作したもので印象深い作品は何ですか?

吉澤: 『シャキーン!』のコーナーとしてつくった、ハンバート ハンバートさんの「はるかなる世界」のミュージックビデオかな。曲の企画から参加させてもらったんですけど、テーマが複雑で映像化が難しかったです。自分を呪いましたね。

古舘どういうテーマなんですか?

吉澤: 私けっこう人見知りなんですけど、明らかに人見知りしてると相手も喋りづらいじゃないですか。だから「人見知りって何ですか?」みたいな、オッパッピースイッチを入れることがあるわけですよ。まぁ言ってみれば演技なんですけど、それを「本当の自分を隠してる」みたいにネガティブに捉える人もいるわけですよ。でも「別に演技しても良くない?」っていうか「ありのままの自分で勝負しなくても良くない?」みたいなところが企画の始まりで。
そもそも「ありのままの自分って何?」みたいな。「人間てそんなに固まってないし、もっと変化していけばいいじゃないですか」みたいな。私自身、入社した時とは全然別の人格になっている気もするし。

古舘映像化が難しかったのはどういうところですか?

吉澤: なり切るっていうことが難しくて。ニュアンスとして、CGとか使って煙がぼわんってなって虫になる、みたいなことじゃないっていうのは分かってたから。ビジュアルの話でも、単なる視野の話でもなくて、自分が変わればシチュエーションが変わって、どんどん自分の居場所が変容してって、気づいたら新しい場所にいるっていうか。そういう循環を提示したかったので。で、一度新しい場所に出会うと、もっともっとってなるじゃないですか。じゃあ今よりもっとすごい景色を見たいって思った時に、私は、やっぱり一人にならなきゃいけないと思ってるんですよ。それをネガティブじゃなく、どう表現するかなーと。そこにすごい思い悩みました。

 

被験者=自分「人生を人体実験だと思ってる」



2010年、思いつきで決行した富士登山。案の定、このあと高山病に。

吉澤:このインタビューを受けるに当たって、なにかを言語化しないといけないと思ってずっと考えてたんですけど、私は人生を人体実験だと思ってるんですよ。

木塚人体実験!?どういうことですか?

吉澤:入社当時、理系の癖が抜けなくて、毎日通勤の往復時間に頭の整理をしていたんです。その日起こったこと全部を自分なりに分析して理由をつけたりして。でもこの仕事って、頭じゃなくて心で対応しなきゃいけないことがたくさんあると思ったから、この頭の使い方は危険かもしれないって思って、やめたんです。もう次の日から、考えるの禁止。頭で決めない。感情で決める。結果、最近同期に「激情家」と呼ばれてますけど。あと、やっぱり理系なんで、基本的には全パターン試してから決めたいんですよ。だからすごい時間がかかるんですよ。で、瞬発力つけたいなと思ったから、めちゃめちゃ仕事を詰め込んで、時間かけずに直感でさばく練習をしたりとか。

古舘: 実験中(笑)

木塚:今やっている実験はありますか?

吉澤: 今はないかも。何か思い出したら連絡します。

翌日


yoshizawa_messe

手作りツナ
実験結果:ツナ

 


インタビュー:古舘 勝義(DIRECTIONS)、木塚 幸代 (DIRECTIONS)
写真:木塚 幸代 (DIRECTIONS)

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