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2020.03.13

  • Interview

【渋谷ストリートクラフターズ】音で遊ぶコミュニケーション!第1期講師対談|石原淳平×アボカズヒロ

【渋谷ストリートクラフターズ】音で遊ぶコミュニケーション!第1期講師対談|石原淳平×アボカズヒロ

【渋谷ストリートクラフターズ】第1期「爆誕!ガレバンスター」の講師を務めた二人による対談をお届けします!


Profile

 

石原淳平 石原 淳平
「ムジカ・ピッコリーノ」「スコラ坂本龍一音楽の学校」など音楽番組を数多く手がけるDIRECTIONSのディレクター。ミュージシャンの演奏を記録するドキュメンタリーチャンネル”GRAPHERS’ GROUP”ディレクター。思い出したかのようにDJや文筆家としての活動も行っている。 
MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO
14歳から”トラックメイカー”として活動を開始。東京藝術大学で多様なアートに触れる学生時代を過ごし、現在は、幼稚園から大箱クラブまで盛り上げる神出鬼没のDJ。 

【目次】
1.なぜ「GarageBand」を使ったワークショップをやることに?
2.スマホで上手に音楽を作ることが目的ではない。音で遊ぶ、コミュニーケーションすることの重要性
3.印象的だった参加者の感想「合わせると強い」
4.譜面で書けない部分にまでこだわるようになった子どもたち
5.互いにリスペクトし合う、石原とアボカズヒロのDJスタイルの違い


 

 

なぜ「GarageBand」を使ったワークショップをやることに?


【渋谷ストリートクラフターズ】第3回「録音して遊ぼう!」

石原 最近、iPhoneのGarageBandで音楽を作ってる若い子が増えてきたなと思っていた時に、アボさんがTwitterで「最近の高校生のラッパーはGarageBandで仕上げてくる」っていうツイートをしていたんですよね。

アボ 10代のラッパーの子が仮のデモをiPhoneのGarageBandで録って送ってくるのが面白くて、その事をツイートしたら、それを石原さんがリツイートしてくれて。

石原: すごい面白いなと思ったし、GarageBandでトラック作ったりしているのを見ていて、どうなってんの!?と思って興味があったんですよね。

▼GarageBandで作られているトラック▼

『uamiの側面の多面体』/曲: 『火傷』/演奏者: uami/ディレクター: 石原淳平

石原 そんな時にちょうどディレクションズの社内でスマホを使ったワークショップをやりたいっていう話が持ち上がって。そういう事なら、アボさんを巻き込んでGarageBand使ってワークショップやるしかないでしょっていうことで話が進んでワークショップをやることになったんですよ。

 

 

スマホで上手に音楽を作ることが目的ではない。
音で遊ぶ、コミュニーケーションすることの重要性


「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_01

石原: まず、僕が予習するんですよ。こういう事やった方がいいかもしれないって「GarageBand」を1週間触りまくって、その成果をアボさんにプレゼンするんです。それで、そのまま行ける場合もあるし、行き詰まってる場合はアボさんにアドバイスしてもらって、その場で一緒にトライしてみるんです。

アボ: 取りあえずやってみて、どうかっていう。

石原: こうやったら楽しいねっていうチューニングを丁寧にやって。それで、ワークショップ本番で参加者にもやってもらって、課題発表してもらう。その時に今度は、僕らがどうリアクションできるかっていうところが試される。

渋谷ストリートクラフターズ<音楽にDRUMMERでドラムトラックを追加してみる!>03
『渋谷ストリートクラフターズ』第1回目

アボ: まず、彼らが作ったものを全部褒めるって僕らは決めたんですよ。ただ、そこで心ない褒め方をされたら子どもは敏感だから気づきます。

石原: 嘘ついてるなって。

アボ: 最初、ちょっと盛り上げようとしたんだよね。

石原: それで僕たちも傷ついた。盛り上げようとすることがいいことじゃないかも知れないって気付かされたんですよ。

アボ: 盛り上げようとすると、やっぱりお客さんになるんですね。大人が盛り上げようとしたら、子どもはこうリアクション取る、みたいな。盛り上げたところで、実は表面的なものであって、参加者同士のコミュニケーションを活性化させるところに繋がっていなかった。

石原: 一人ひとりとしか繋がってない感じ。彼らも僕らを通してしか隣の子と会話できていないのが良くないと思って。

アボ: グルーヴしてない、乗りが足らない。でも、それを無理に乗せるのはすごく嫌なの。自分に主体性がなくても、乗せて欲しいみたいな。だから、自発的に乗りたくなるにはどうするのか、みたいなことを考えて。重要なのは、こっちが用意したものを若い子たちに向けて発信するっていう事じゃなくて、彼らが発信しているものを僕らがいかに受け取るかっていう事。

「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_02

石原: 僕は途中で、最高の観客が最高の作り手を引き出すっていうふうに思って。これは「作るワークショップ」なんだけど、実は「受け止めるワークショップ」だったのかも知れないって思うようになって。みんながどう最高の観客であるか?他の子の作品を聞いてる時の顔とか、雰囲気とか。こいつらの前だったら発表してもいいかな、みたいな。そういうところにいい作品が出てくるような気もしたし。

アボ: だから、スマホで音楽を作るのが上手になるっていうのが目的じゃなくて、自分なりの何かを作って、友達とシェアして、それに対してリアクションして、みたいなことがやっぱり重要だよねっていう。

渋谷ストリートクラフターズ

石原: 「GarageBandでコミュニケーションしよう」っていうタイトルは結構こだわって付けていて。ガレバンを2台使えば、対戦ゲームみたいにできるとか、そういう遊びの提案を僕らはしていきたくて。ボイスチェンジャーで声変えたら、言いにくいことを相手に伝えられるかもよ、とか。そういう音楽が持ってる魔法の成分みたいなものを、コミュニケーションに役立てられるかも知れない。隣の人を笑わせられればいい、LINEスタンプみたいな音楽の利用法もあるかもって。

アボ: 創作っていうものが、彼らの日常の営みの中に、どうすれば自然なかたちで入っていくのかっていうことは結構考えましたね。ものを作ることを特別なことにしない。アーティストぶってる、みたいな感じじゃなくて。

 

 

印象的だった参加者の感想「合わせると強い」


「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_03

石原: ワークショップでビートマシンを2台使ってセッションするっていうことをやったんですけど、最初にビートマシン1台でそれぞれビートを作って、じゃあ、2人でやってみようって。同時にポンって再生ボタン押すと、対戦ゲームみたいになって面白いんですね。空気の読み合いみたいな感じになって。それを人と合わせたくないっていう子がいて。なぜなら「俺の作品は俺一人で完璧だから。なんで俺は人と合わせなきゃいけないんだ」っていうふうに言ったの。

アボ: 彼の作風っていうのがあって、自分のメモ書きのとおりにしか演奏しない。

石原: ストーリー主義な子で、いかにストーリーを展開させるのかが重要っていう作風なんですよね。でも、まあ、いいからやってみればってやらせたら、すごい楽しかったみたいで、もう一回二人でやりたいって言い出して。それで、もう一回ってやらせたら、彼は途中で演奏をやめて、なんと踊り出したんですよ。

アボあれは人類の進化を見た(笑)

「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_04

石原: その前まで「俺は人とやりたくない」とか、めっちゃわがまま言ってて。だけど、彼が踊った瞬間にみんながゲラゲラ笑いだして、なんかもう全て許されるみたいな(笑)隣の子が演奏してたら、自分でストーリーを展開しなくても、隣の子が展開してくれるって気が付いたんだよね。

アボこれがさっき話した、乗る、乗らないっていうところに帰結してくるんですよ。つまり、彼は自分から乗っていくぞっていうことになったんだね。踊るぞっていう、乗るぞっていう。隣の子のビートに主体的に乗ってみようかなっていう。

石原: 相手の音を聴きにいく、主体的に受け取りにいく、掴みにいくっていう作業をあの時の彼は確かにやれてたよね。それで、その日の感想カードに彼が書いたのが「合わせると強い」

アボ 合わせると強い。

石原: それって、DJがやってることじゃんね。

アボ: ついに彼のターンテーブルが1台から2台に(笑)!!彼は、グルーヴを合わせると面白くなるってことに気付いた。人に合わせると面白くなる。それまで、人に合わせてもらうばっかりだったかも知れないけど。

石原: あれはめちゃくちゃ勉強になったな。

 

 

譜面で書けない部分にまでこだわるようになった子どもたち


「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_05

石原僕が音楽を評価する軸は2つあって、1つ目は音が色っぽいかどうか。もう1つは、展開が手品みたいになってるか。こうなると思わなかったのに、え?そうなるんだ、みたいな。この2つが、実は自分が作品を作る時にも大事にしてることなんだけど、参加した子たちが作るものもそういうふうになってるものが多くて。こっちが一生懸命聴こうって気持ちを寄せていかなくても、十分聴きたくなることが多かった。そういう作品と出会えるとやっぱり嬉しいし、そういう出会いのために生きてる、みたいなところもあるから、それが目の前にどんどん起きてくるっていうのは、捨てたもんじゃないなって思って。起きないときは全然起きないでしょ。だけどそれが起きてるってことは、あの場が正しいって証明されてるようでもあった。

アボ僕は、彼らが何をずっと持ち続けて大人になっていくんだろうと思ってて。彼らの感性の発露を見ながら、その瞬間にぽろっと出てきたものの中に、彼ら一人ひとりがずっと抱えて生きていく感性のツボみたいなものがある気がして。そこが見えたら、どう褒めてあげるかっていうことを常に考えてた。しかも、それをできる限りいろいろな褒め方で、何週にも渡って角度を変えて褒めていくみたいな。そうすることによって、彼らの内に秘めたフェチシズムみたいなものが立体的になっていく。それがだんだん作るものに反映されていくっていうのを、一回一回じゃなくて、ワークショップ全体として僕は目指した。その結果、彼らが最終的に音色にこだわるようになったんですよね。音楽の構成とかメロディーとかだけじゃなくて、音色っていう譜面で書けない部分にすごくこだわるようになっていったっていうのが、僕はすごく面白かったし、嬉しかったことではありますね。

 

 

互いにリスペクトし合う、
石原とアボカズヒロのDJスタイルの違い


「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_06

石原: アボさんは、幼稚園や精神科病棟でもDJをやっているんですよね。

アボ人生の中にパーティータイムがあんまり来ない人たちっているでしょ?でも、そういう人たちにパーティーを届けるっていうのが、DJができる都市のアンダーグラウンドの福祉だと僕は思っていて。僕はデイヴィッドマンキューソというDJの思想に大きな影響を受けています。彼は、1970年にThe Loftというパーティをスタートさせました。そのパーティは、いわゆる商業的なディスコとは一線を画しており、選曲と出音に強いこだわりを持ち、そして少数派を積極的に受け入れていくという現代の全てのアンダーグラウンドクラブの祖といってもいいパーティでした。このパーティとマンキューソはその独自の哲学で構築されたサウンドシステムや選曲で語られることが多いのですが、僕が強く影響された部分はむしろ、少数派やはみ出し者も受け入れていくそのパーティ哲学ですこの哲学はマンキューソが幼少期を過ごした教会が運営する孤児院でシスターが開いてくれたホームパーティにあると言われていて、マンキューソ曰く「良い音楽と、美味しいお菓子と、認め合う心があればグッドパーティは出来るのだ。と。だから、アンダーグラウンドクラブというのはそもそも福祉のマインドが根元にはあるのです。今となっては遠い昔の話かもしれませんが、僕としては変わった事をしているつもりは毛頭なく、むしろここの基本に忠実にやってるつもりだったりします。

「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_07

アボ: パーティーって騒ぐなら騒げばいいし、そこで騒がないっていう自由もある、似た者同士ならぬ ”似てない者同士” が互いの差異を尊重し合ってお互い楽しく過ごす。なんならその差異を味わいあって楽しみ、心を通わす。そういう時間がその人の人生にどれぐらいあるかっていうのがすごく重要だと思っていて。そもそもマジョリティ/マイノリティというけど、本質的にはマジョリティは幻想だったり仮想的な概念だったりして、実際のところはマイノリティの集合体にすぎないのかもしれないし。

石原: そういうことをTwitterでつぶやいていて、面白いなと思ってリツイートしたら、その夜…僕がDJしてるバーに来てくれて。

アボ: 石原さんが「ムジカ・ピッコリーノ」っていう音楽番組をやってるのは知ってたから、どういうことを考えて音楽と向き合ってるのかっていうのに興味があって会いに行ったわけですよ。実は僕とムジカ・ピッコリーノの関わり合いでいうと「メロトロン号でパーティ」という曲の制作に関わっていてご縁があったんです。でも、その時は人づてでのデータのやりとりだけで面識はなかったんです。あの番組をどんな人がなにを考えながら作ってるのか興味があって。そしたら、すごく編集感覚に満ちあふれたDJをしていた。
音楽の間合いじゃなくて、テレビの編集のグルーヴ感でDJミックスが進んでいくのがすごく面白くて。ヒップホップ的な乗りではないんだけども、なんか不思議なグルーヴ感があって。それは、クラブミュージックの世界でDJをやってる人じゃ出てこない引き出しだなっていう感じもしたし、不思議な異国の人が、同じ道具を使って不思議なことをやっているようで、すごく面白かったんですよね。

「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_08

石原: 僕のDJは「あの日のトレンディドラマごっこしようよ」みたいなテーマになっていたりするんだけど。

アボ: 絵を作っていくんですよね。一つの空間を絵として作っていく、音楽の力で、ムードで。

石原: 基本的にはお客さんに媚びるタイプのDJなんです。今、お客さんたちが欲してる音楽を僕のライブラリから提案したい。それで、今日は90年代トレンディドラマで行こうとか決めて、よし今日は『SAY YES』だ、と、かけるわけです。めちゃくちゃ名曲なわけですけど、みんな意外と大きな音で聴いたことないから、感動が生まれるという。

アボ: 面白いですよね。その一方で僕は、みんなが一番気持ちよくなる温度をずうっと探ってて。25度かな?26度かな?みたいな。

石原: アボさんはすごい絶妙な火加減を作るわけです。どう気持ちをスムーズに移行させていくかっていうことを、丁寧に作るわけ。

アボ: 「知ってる→知らない→知らないけどいい」みたいなグラデーションが丁度良くなるような具合の音楽は何かな?とか。何を与えるかっていうことの裏側には、何を与えないかっていうこともあるわけで。何に飢えた時にこの人たちの欲望がスパークするのか、みたいな。

「渋谷ストリートクラフターズ」講師対談 石原淳平×アボカズヒロ_09

アボ: 例えば、みんなに一体感を出したい時、みんなが知ってる共通項を出せば一つになる気がするじゃないですか。
でも、それは、乗るかそるか分かんないでしょ。ちょっと発想の転換をしてみて、みんなが一様に知らない未知の状況に直面してしまったときに、人は団結する瞬間があるんですね。「うわぁ!このメンバーで、この漂流を乗り切らねばならぬ!」みたいな感じで、楽しみ方をみんなで探し始める瞬間があるんですよ。だから、みんなが知ってるところを迎えに行くんじゃなくて、この無人島に取りあえずおいでよ、みたいな感じなんです。

石原: 僕のDJは、笑顔が一番大事だと思ってるんですよ。僕が超楽しいっていうことを伝える。邪道です。でも、アボさんはすごいクールな顔つきでプレイするんだよね。

アボ: 別に日によっては顔芸しながらDJしてる日もありますが、僕のDJのスタンスとしては僕がいるってことをみんなが忘れたら成功だと思ってて。姿だけ見えなくて、音だけの存在になってる瞬間があったら、その時は調子いいですね。

 


『渋谷ストリートクラフターズ』ではIOSアプリ「GarageBand」を使ったワークショップを2020年度も開講予定です。(開講時期未定)


 

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