「アソビコンテンツ」のメンバーにインタビュー
05Company
このインタビューを行ったのは11月中旬。今回は新型コロナウイルス対策を万全に整え、全員マスク着用。部員数21名とそこそこ大所帯で何か楽しそうな部署名の「アソビコンテンツ」の4人にインタビュー。
Profile
伊藤 直行 |
Ito Naoyuki |
アソビコンテンツ 部長/ディレクター・プロデューサー 2004年より在籍 。十数万の子どもたちが同時接続して遊ぶ視聴者参加型の子ども番組をはじめ、子ども向けエンターテインメントコンテンツ全般の企画開発を担当。映像の質以上に“体験の質”にこだわりながら、子どもたちを“夢中”にさせることに情熱を燃やす。 好きな食べ物はつけ麺。 |
寺谷 鉱 |
Teratani Koh |
アソビコンテンツ/ディレクター NHK Eテレ「ビットワールド」の演出・ゲーム開発などを担当。趣味は、食べること全般・ゲーム。最近ハマってるのは、某ソーシャルカードゲーのオリジナルデッキ研究。 |
小林 温志 |
Kobayashi Atsushi |
アソビコンテンツ/ディレクター・プロデューサー NHK Eテレ「天才てれびくんhello,」にてゲームエンジンとデータ放送を用いた双方向生放送の開発・演出・運用・一部グラフィックを担当中。ほか、子ども(幼児)向けの知育コンテンツも準備中。社内部活「Unity部」を運営。 2年間の渡米経験あり。 |
堀 友香 |
Hori Yuuka |
アソビコンテンツ/ディレクター NHK Eテレ「天才てれびくんhello,」ロケ企画などを担当。 牡羊座のA型。趣味はアイドルのライブに行き、たくさんCDを買うこと。 |
ー
インタラクティ部 から アソビコンテンツへ
木塚: 今年度から部署名が「インタラクティ部」から「アソビコンテンツ」に変わりましたが、どうして改名したんですか?
伊藤: 改名したというより、新しく生まれたと思ってもらいたいな。今までの「インタラクティ部」っていう名前は、Webやデータ放送を使ってインタラクティブな番組を作るのが由来だったけど、それは楽しさを作るための1つの手段でしかないから、「とにかく面白いものを作って一緒に遊ぼうぜ!」ということを伝えたかった。スティーブ・ジョブズの「Stay hungry, stay foolish」を私なりに解釈すると「全力で遊べ」ということだと思っていて、アソビコンテンツの全員にそうあって欲しいし、ターゲットである子どもたちにも、我々の作るコンテンツで夢中になって遊んで欲しい。もっと言うと、関わってくれる社外のスタッフやクライアントとも遊ぶように楽しく仕事がしたい。「俺たちと一緒に仕事すると楽しいよ」ということを標榜しました。
木塚: 部署名を「アソビコンテンツ」に変えたことによって何か意識の変化などはありましたか?
寺谷: 対外的に分かりやすくなったっていうのはありますね。
小林: 名前負けしないように楽しいことを提案しないといけない、というプレッシャーを少し感じてます。
堀 :名刺を渡した時に、「アソビコンテンツってどんな部なんですか?」ってちょっと興味を持って頂けたことがあって、「遊び心を持って仕事やってます」と答えたら「楽しそうでいいね」って言われました。
伊藤:「楽しそうでいいね」って大事なんだよ。仲間になりたいって思ってもらいたい。
木塚: アソビコンテンツには、「天才てれびくん」を制作している班と、「ビットワールド」を制作している班がありますが、2つの班が協力する時もあるんですか?
伊藤: ありますよ。子ども向けのコンテンツや製品の開発とか、番組以外のコンサルティング的な案件が今年になって増えていて、そういった案件は一緒に取り組んでます。
小林: 「ビットワールド」班は毎回新しいことにチャレンジして、色んなゲームを開発しているから、既存のルールをちょっと壊せる強さを持っていますね。「天才てれびくん」班で開発している生放送では、Unityを画作りのベースとしたデータ放送のゲームを限界まで突き詰めたり、ルールの中で最大限遊ぶ方法を考えるのが得意です。
古舘: 既存のルールを壊せるって、どういうことですか?
伊藤: 例えば、データ放送で連打を使ったのって、たぶん「ビットワールド」が最初なんですよ。敵を倒すために、視聴者にリモコンのボタンを連打してもらって、合計連打数が100万を越えたら倒せる、みたいな仕組みを考えたんですけど、最初に相談したところには「そんな使い方はメーカーが推奨してません」って言われて。でも、いつも無茶を聞いてくれるエンジニアさんがいて、その人に相談したらすぐに試作してくれて、「できるじゃん!やろうぜ!」って、2011年に生放送で実現しましたね(笑)
古舘: 最近だと、どんなことに挑戦しましたか?
伊藤: 『バーチャル渋谷 au 5Gハロウィーンフェス』内で、子ども向けのバーチャルイベントの企画、演出、CG制作を担当しました。
その時に改めて思ったのが、我々って、もう20年前からバーチャルを使った番組作りをしてきたから、バーチャル空間でのエンターテインメントの蓄積がかなりある。Webやデータ放送を通して参加者とコミュニケーションを取りながら展開する生放送にもずっと取り組んできたから、応用するといろんなことができる。
古舘: 実はバーチャルの演出ってけっこう難しいですよね。何でもできるけど、何でもありにし過ぎると、とっかかりがなくなって逆に面白くなくなる。リアリティと変なもののバランスは経験値だなって思います。
伊藤: エンターテインメント性というところもあるんだけど、期間と予算の中でどこまで行けるか、という判断はすごく経験が要ること。
これまでは放送局の大掛かりなシステムを使ってバーチャル空間の映像を作ってきたけど、今はパソコンを数台並べれば参加者が手軽にバーチャル空間を体験できる。新しい世界が来たなっていう感じはありますよね。
部員2名。社内部活 「Unity部」が何かすごいもの作ってる
木塚: 小林さんは、最近、夢中になっているものはありますか?
小林: 毎週1〜2回、同じ部署の川島君と2人でUnity部の活動をしてます。2人でビデオ会議ツールに入って、最初にやる事を決めたら、画面も音声もミュートで1時間半以上個々に作業して、最後に進捗を報告し合う地味な社内部活なんですけど。
木塚: 2人ぼっちのUnity部では今、何か開発してるんですか?
小林: バーチャル上でライブが出来たりするインスタレーション空間を作ろうとしてるんですけど…
古舘: ちょっと見せてよ。
小林: アーティストの中山 晃子さんと共に、液体が混ざったような模様の空間を作ってます。
小林: 泡をクリックするとフワフワ動いたり、壁に生配信の映像を映し出したりして、ゲーム性のあるライブ空間みたいなものを構築できそうだなって。まずはシステムから手をつけて、演出はまだちゃんと考えられてないんですけど。
古舘: Unityを自分でさわっていると、仕事で外部のクリエイターに発注する時も、何が難しくて、何が効率がいいのか、見当がつくようになりますね。
小林: そうですね。恐らく問題解決はかなりできると思います。
ディレクターデビューがいきなりリモートロケから始まった
木塚: 堀ちゃんは今年度からディレクターになってどうですか?
堀 : 「天才てれびくんhello,」のロケ企画のディレクターを任されたんですけど、緊急事態宣言が出て、最初のロケがリモートになっちゃって。どうしようって思いながらやってきました。最近やっと普通に外でロケができるようになって、状況に合わせて頑張ってますって感じですね。
古舘: 最初がリモートでのロケって大変だったね。誰もノウハウを持ってないもんね。
堀 :そうですね。探り探りやってました。別々の場所にいる出演者をビデオ会議ツールでつないで、ゲストの先生から工作を教えてもらう、みたいなことをやったんですけど、ビデオ会議ツールが途中で止まっちゃって、お互いに何やってるか分からないっていう時間が流れたりして。最近は、直接会って説明できるので、すごくやりやすいです。
伊藤部長の企み
木塚: 伊藤さんがこれから挑戦したいと思っていることは何ですか?
伊藤: 学校の授業や、地域の盆踊りや、朝のラジオ体操など、昔からずっと変わらないものが、そろそろ新しい形に変わってもいいんじゃないのかなと思っていて。何か1つ先行事例みたいなものを作りたい。
例えばラジオ体操だと、目的は早起きして体を動かすことだと思うんだけど、そこに遊び心として「スタンプカード」みたいなものがあって、我々が担えるのはその「スタンプカード」を新しい形に変える部分なんじゃないかと思っている。そういうことの先に、これまでは国内の子どもたちをターゲットに映像コンテンツを作ってきたけど、これからは世界の子どもたちをターゲットにして、アソビコンテンツを展開してみたいという野望がある。
伊藤: あと、最近は横浜で面白そうなことをやっている人たちに仲間に入れてもらったりして、プロジェクトの種まき中です。次は仙台に行きたいな〜。プロジェクトが芽吹けばその場所に行けるようになるから、月1回ぐらいのペースで、行きたい地方都市に種を撒こうと思ってます。
クソゲーの巨匠、寺谷氏がこれから作りたいクソゲーとは?
木塚: 「寺谷さんがアリと恋愛するゲームを作ってるらしい」という噂を聞いたのですが…
寺谷: 「ビットワールド」の視聴者の子どもから「アリと恋愛するゲーム」と「タンスの角に小指をぶつけまくるゲーム」というアイデアが送られてきたんだけど、検討して「タンスの角に小指をぶつけまくるゲーム」を作りました。
古舘: その二択がすごい(笑)
寺谷: プレイヤーがタンスになって動いていって、最初は家の中で裸足の人の小指にぶつかって、次は路上で靴を履いた人の足にぶつかって、最後は宇宙で巨大な宇宙人の足の小指にぶつかるっていうゲームになりました。
木塚: 発想が斬新すぎる(笑)これから作りたいと思っているゲームはありますか?
寺谷: 「前世」をテーマにしたゲームを作りたいと思っていて、クリアすると先祖返りするとか、時代を越えていくクソゲーが面白いかなって。
例えば、たまたまどこかで会った人と実は千年前にも会ってたかもしれない!とかって妄想し放題だから、ゲームの肥やしとしてはいいのかなって思ったりしてます。
大晦日に観て欲しい番組
古舘: 直近で、アソビコンテンツが力を入れたものはありますか?
寺谷: 「ビットワールド」で、子どもたちのアイデアだけでミュージカルを作ってます。
伊藤: 子どもが考えたフレーズをセリフにしたり、衣装とかももうぶっ飛んでるんですよ!
寺谷: 台本化してみて分かったんですけど、1700以上の子どもたちのアイデアの結晶です。
伊藤: 12/4(金)と11(金)に2週にわたって放送されたんですが、再編集した60分版が大晦日の「紅白歌合戦」の前にも放送されます。
古舘: 紅白前にテレビ観てたら何か変なのやってるぞ!って、これまで観たことなかった人にも届くといいですね!
インタビュー:古舘 勝義(DIRECTIONS/コネクティブラボ 部長)
編集・写真:木塚 幸代(DIRECTIONS/コネクティブラボ)