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2019.07.08

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子どもたちが大興奮!“牛の乳搾りゲーム”を作った男【 Creators Interview #01×寺谷 鉱】

子どもたちが大興奮!“牛の乳搾りゲーム”を作った男【 Creators Interview #01×寺谷 鉱】

社員の取組みや制作に対する思いをお届けするDIRECTIONS社員インタビュー第1回目は、NHK Eテレの子ども番組で世界初「データ放送で牛の乳搾りを体験できるゲーム」を企画・開発するなど、数々のクソゲー(褒め言葉)を生み出し続けるディレクターの寺谷 鉱さんにお話を伺いました。


寺谷 鉱 (てらたに こう)
1979年生まれ、東京都出身。趣味は、食べること全般。
最近は世界のビールを飲むことにハマっているが、一番好きなビールはサッポロ黒ラベル。


【目次】
1.子ども番組の制作を志した理由
2.クラスの盛り上げ役だった小学校時代に得た“財産”とは
3.世界初!?「データ放送で乳搾りゲーム」誕生秘話
4.子ども番組を制作する時に一番大事にしている事
5.「子ども」×「eスポーツ」に見る今後の可能性
6.糖分摂り過ぎて頭がおかしくなりそう!?ストイックなスイーツ巡り
7.【検証】スイーツ男子 寺谷は違いがわかる男なのか!?

 


ー 社員インタビュー記念すべき第1回目ですがよろしくお願いします。
さっそくですが、寺谷さんはDIRECTIONSへ入社される前は何をされていたんですか?


僕はDIRECTIONSに来る前は、民放のバラエティを中心に制作している番組制作会社にいました。
バリバリの昭和体育会系みたいな所でいろんな思い出ありますけど。
なんか今の子達には考えられないような、スパルタでノリがバブルみたいな所で…。
もともとテレビ番組の制作をすごくやりたい人間じゃなかったし、テレビっ子でもなかったけど、
何かを作ったりするの面白そうかなっていうぐらいの気持ちでこの業界に入ったタイプなんです。
前の会社を辞めて、次にやるなら子どもを相手にする番組がいいなと思ってDIRECTIONSに入社したのが2009年の秋頃。袴田さん(弊社プロデューサー)とか長江さん(弊社 社長)を抜いたら「ビットワールド」では僕が最古参さんになっちゃいましたね(笑)。



ー 「次にやるなら子どもを相手にする番組がいいな」と思われたのはなぜですか?


原体験として「子どもの頃はこういうのが楽しかった!」ってあるじゃないですか。
そういうのを今も引きずってるっていうか、大事にして生きてきたっていうのもあって。
子どもを楽しませることだったら自分も興味を持って取り組めそうだなと思ってました。


クラスの盛り上げ役だった小学校時代に得た“財産”とは



ー 子どもの頃の“原体験”を大事にしてきたということですが、
“原体験”というのは具体的にはどんな事だったんですか?


自分がいた小学校のクラスを面白く盛り上げよう!って思い立ったことがあって。
なんでかっていうと、クラスに好きな女子がいて、その子笑うとすごくカワイイんですよ。でなんとか笑わせたいんだけど、直接その子を笑わせに行くと僕がその子を好きって周りにバレちゃうのが恥ずかしくて(笑)。
クラス全体を笑わせればその子もウケて笑ってくれるっていう事がモチベーションだったんです。


ー  寺谷さんでも小学生の頃は人並みに可愛い事をしてたんですね。



それから2年間ぐらいそれを維持しようと思ったらすごい大変だってことに途中から気付くんですけど(笑)。日本人ってやっぱり嫉妬が凄いんで、いかに嫉妬をかわしながらその位置をキープするのか、とにかくいかにクラスメイトを笑わせるのかっていうことを小学校2〜4年生くらいまで考えてましたね。
よく会話術のマニュアルみたいなのでオウム返しするとかあるじゃないですか。
たとえば相手を笑わせるには「なるべく会話を途切れさせずに続けた方がよい」とか、
女子3人を相手にするなら、必ず平等に会話を振ろうとか(笑)。
そういうのを自力で、クラスメイトから学んだなと思っていて。

ー 小学生にしてすごい気配り上手というか、随分サービス精神が旺盛な子だったんですね。

だから今番組制作の仕事をしていても、自分のことをクリエイターだとはあんまり思っていなくて。ただサービスする人間として、良質なサービスをしたいなっていう気持ちでやってるっていうのはありますね。


ー 「クリエイターとしてというよりは良質なサービスをしたい」という気持ちで日々番組制作をされているということですが、社内で寺谷さんについて聞き込み調査をしたところ、なかなかの話が出てきまして…
それも全て良質なサービスをしたい気持ちから生まれているということでしょうか?ちょっと読み上げます。


寺谷3大珍事件

データ放送の企画で、牛の乳搾りをするゲーム提案
イメージがあまりよろしくないとのことで
関係者に反対されていたが、押し切って放送
あとで面白さを認められる。

「おしりたんてい」が流行っていることに触発されて、
女性出演者で「ふとももたんてい」のコーナーを作ろうとしたが、
社内スタッフにも反対されて頓挫

女王蜂のキャラクターにあげるプレゼントとして
セミの抜け殻の首飾り」を提案。
意味不明として却下される。

 


世界初!?「データ放送で乳搾りゲーム」誕生秘話


宇宙牛

ー 3大珍事件の中の、“データ放送で牛の乳搾りをするゲーム”って正直言ってとんでもないクソゲーだなと思って、初めて聞いた時に爆笑してしまったんですけど、何で牛の乳搾りゲームをやろうと思ったんですか?


大学時代の友達に秋田で神社の神主をやってるちょっと変わった友達がいて、夏休みにその友達の家に遊びに行った時に近くの牧場に行こうとしたんだけど、結局他の所を観光してたら、行けなかったってことがあって。
僕は生まれてこのかた牧場に行ったことがなくて、
それが心残りで…。
ちょうどその時「よつばと!」っていう漫画で、主人公の女の子が牧場に行って乳搾りする話を読んでいたのもあって、やっぱり子どもってこういう初体験って楽しいんだろうな、どういう風に感じるのかなと思っていて。
それで秋の生放送でデータ放送でゲームをやることになった時に、乳搾りをする感じとリモコンの色ボタンを左右に連打する感じがなんか感覚的に繋がるんじゃないかなと。


(当時を思い出しながらリモコンの青と黄色のボタンを連打する動きを実演してくれる寺谷氏)

手の形や指の動きが近いってことが、「牛の乳搾りをする」っていう妄想を補う上ですごく有効なんじゃないかなと思って。とにかく子どもたちに乳搾り体験をさせたいって思ったので、全然番組の流れとは関係なかったんですけど脈絡なく牛が降ってきて、最後乳搾りをするっていうことにしたんです。


ー 関係者に乳搾りゲームを反対されていたと聞きましたが、どういった部分で反対されていたんですか?


僕的には乳搾りのゲームをする時に「おしぼりタイム」って言いたくて、だけど「おしぼりタイム」ってネットで検索すると、「なんかいかがわしいサービスが出てきちゃったりして、良くない」みたいなことを言われてすごく反対されたんです(笑)。


ー 反対されてたのはコーナ名の方だったんですね…それで結局どうなったんですか?


とにかく子どもが聞いて「乳搾りだ!」って直感的にパッとわかるネーミングにしたくて。
反対されてもギリギリまでナレーションの原稿を変えずにねばってたんですけど、関係者も許してくれなくて、最終的には僕が折れて。でも結果それでその関係者との関係は良くなったりして、やっぱり色々ぶつかったりして、雪解けると人間関係って良くなるんだなっていうのが意外な副産物でした…。

※最終的には「乳絞り開始!」でゲームを開始することになった。

データ放送宇宙牛乳搾りゲーム

ー 牧場に行けなかった心残りが結果的に伝説のクソゲーを生み出して、全国の子どもたちに喜んでもらえたってなんだかいい話ですね〜(しみじみ)。


僕が牧場を体験できなかった代わりに、データ放送のゲームだけど全国の子ども達にやってもらえたらいいな〜って。
子どもに喜んで欲しい、楽しんで欲しいってなった時に、人それぞれやり方はあると思うんですけど、僕は自分の原体験みたいなことを大事にしちゃうタイプなんで。

<寺谷Dここ数年の3大珍事件②と③についても聞いてみました>

②「おしりたんてい」が流行っていることに触発されて、女性出演者で「ふとももたんてい」のコーナーを作ろうとしたが、社内スタッフにも反対されて頓挫。

関係者から「駄目です。それはないです。」って言われて。
まあいいんですけどね、僕もどうしても“ふとももたんてい”がやりたいって思われるのも心外なんで(笑)。そこは全くねばろうとは思わなかった。実は別の探偵キャラがすでにいたんで、そのキャラを使ってやりたいことはできました。

③ 女王蜂のキャラクターにあげるプレゼントとして
「セミの抜け殻の首飾り」を提案。意味不明として却下される。

これ、しょこたん(中川翔子)がセミの抜け殻をアクセサリーにしていて、ちゃんと元ネタはあるんですよ!
他にも、「花粉玉のネックレス」とかよくわかんないのを提案してるから、
意味不明っていう印象が強いのかもしれないけど。

花粉玉ネックレス

 

子どもの妄想する余地を残したい




ー 子ども番組を制作する時に一番大事にしている事は何ですか?


やっぱり子どもの妄想する余地を残したいなっていうか。
例えばただのテレビのリモコンなんだけど、「それは剣だ!」とか設定を作ってあげて。
それをそう思って操作してもらうのと、ただ単にボタンを押してくれっていうのではだいぶ違うなと。スターウォーズを観た子どもがそこら辺に落ちてる棒切を、これがライトセーバーだ!と思って振れば、
もう頭の中ではそれがライトセーバーじゃないですか。単純にリモコンで「何か押せ」みたいなことにしたくない。
連打によって何かちょっと動いたり、この連打は何かをするための連打なんだ、
てっいう意味を持たせる事を大事にしていますね。
なので、子供が妄想で補完する余地を残してあげることが重要かなと思ってます。

ー 番組制作やモノ作りをする上で、何か参考にしていたり、バイブル的なものはありますか?

僕、漫画が好きなんですけど、自分が楽しいと思ったことをやるっていう姿勢については週刊少年ジャンプで連載していた「銀魂」が参考になりました。「銀魂」の作者の空知さんってちょうど僕と同じぐらいの世代で、一部の読者にしか伝わらない古いネタとかをギャグにしてるんですよ。
聖闘士星矢のギャグとか、今の子全く分かんねえよ!みたいな(笑)。
だけど、とりあえず全力で球を投げるみたいな姿勢なんですよね。
「自分が楽しいと思っていることを全力でやりきる」。だから変に媚びないし分からせようともしない。むしろ分からなくてもいいけど何か楽しそうなことをやってるな〜って雰囲気で笑わせようとしてるみたいな狙いもあって。そんな潔さと下心が混ざった感じが好きで。
あとは割とパロディが多くて、そういう手法も好きでよく読んでました。

 

「子ども」×「eスポーツ」に見る今後の可能性とは


ー これからやってみたいことはありますか?

eスポーツを4、5年前から好きで観ていて、でも今の日本のプロゲーマーってほとんど格ゲー、格闘対戦のストリートファイター周辺にいる人たちがほとんどなんですよね。
昔ってゲーセンに行かないと対戦できなくて、とにかくひたすらゲーセンに通って腕を磨いてた人たちが今の日本のプロゲーマーのベースにあるんです。ゲーセン文化の代表者みたいな。それで、その界隈でいうと若手のスターが足りていないから、そこにちょっとしたビジネスチャンスはあるんじゃないかなと思ったり。
僕たちは子ども番組を制作していて、日々子どもにウケる物を知っていて、作っているということは強みになるし、若い子とeスポーツを繋ぐみたいなことでいうと、そこの組み合わせは凄く良いだろうなと。
基本的には「ゲーム」と「子ども」を組み合わせて何か作ることにこだわってやっていきたいですね。

 

糖分摂り過ぎて頭がおかしくなりそう(ꉺ౪ꉺ)
ストイックなスイーツ巡り


ー ちょっと仕事の話とは離れますが、寺谷さんと言えば社内ではスイーツ好きで有名ですよね。
いつからスイーツ男子的な感じだったんですか?


大学生になるまではお菓子といえばコンビニで満足で、“きのこの山”最強!と思ってたんですよ。
でも、友達の影響で、また秋田で神社の神主やってる友達なんですけど、当時六本木ヒルズにオープンした“TORAYA CAFE”に行こうって誘われて。ちょうど暇だったから一緒に行ったらハマっちゃって。そこからネットで美味しいスイーツのお店を調べてカフェ巡りを繰り返すようになって。
行ったら、とりあえず食おうってことで、同じ店でまあ2個くらいスイーツ食いますよね。
3軒はしごするから、1日に6個とか食う計算になって、さすがにちょっと限界かなって、
ちょっと1回何か挟まないと、糖分摂り過ぎて頭おかしくなりそうになってきて(笑)。
間に蕎麦食うか…ってなってましたね。

ー スイーツ食べ過ぎて「糖分摂り過ぎて頭おかしくなりそう」とかストイックなのかなんなのか…(笑)
「パティシエのこだわり」みたいな部分にも色々想いを巡らせたりみたいなことをしながら味わったりもしてるんですよね?


スイーツとかケーキって、1個どんなに高くても500円ぐらいで買えて、大学生のバイト代でも食えるんですよね。
だけど、何か凄くこだわってて、ソースをいっぱい重ねてて、胡椒が入ってるとか言われて
食べると、なんかもうよくわかんない!とにかく、こだわりの世界なんだなと思って。
よくわからないものを何とか評価しようっていうか、自分なりに飲み込もうとする作業であったりするんで、“美味しい”っていう感覚を揺さぶられるんですよね。
“きのこの山”っていつ食べても同じ味で、それはそれで好きなんですけど、こだわりのスイーツはちょっと不安になるというか、「そもそも美味しいの!?どうなの!?」って。
この組み合わせはこのパティシエがこれが正しいって思ってるんだけど、場合によってはそれが僕には全くよくわからない。ただ甘いだけにしか感じないとか。
逆に別の人が作ったスイーツの感覚はすごくよく分かったり。
だけどそれを評価しようとすると、総じて言うと美味いのか、みたいなことだったり…。
そういう経験がおもしろいんですよね。

【検証】スイーツ男子 寺谷は違いがわかる男なのか!?
大好きなブランマンジェと似ているパンナコッタの違いを見分けられるのか!?
パンナコッタをブランマンジェだと言って食べさせてみた。


ー 長丁場になってきたのでここでちょっとスイーツでも。
さっきデパ地下で買ってきたんですけど、「赤メロンのブランマンジェ」です。
どうぞ召し上がってください。

いただきま〜す。
こういうのもここから行くのが正しいのか、

こうたぶん混ぜて、制作者はたぶんここのハーモニーを味わって欲しいんだろうなみたいな事とかを考えちゃうんすよね。

ー 「赤メロンのブランマンジェ」美味しいですか?

うん。美味しい。

ー その白い部分がブランマンジェですよね?

うん。そうじゃないですか。
そうなんですよ。これ、揺さぶられるんですよ。
こう下からすくって食って欲しいんだろうな〜
あとこのクリームと混ぜて欲しいんだろうなとかね。

もう凄いじゃないですか。
この時点で、果肉があってクリームがあってブランマンジェがあって、下にゼリーがあって、グッとスプーンを入れた時の5個くらいある要素を、入れた時のこの感じを制作者は狙って作ってるんでしょうけど、僕にそれがどこまでわかるかなと。
だからそう思った時に、楽しいというか、深いっていうか、とにかくこだわってもいい世界っていうか。こだわり過ぎてこだわり過ぎて、このまま行くとだいたいわかんないですよ〜、みたいな。
どこまで伝わるのか!?大丈夫ですか!?みたいなのは結構あるんですけど。

ー え〜と、お楽しみ中に恐縮なんですが… 

 

 

 

ー 今食べてもらってる「赤メロンのブランマンジェ」なんですけど…

 

 

 

 

ー 実はパンナコッタなんです。

赤メロンのパンナコッタ」。

え〜(笑) そうなんすか〜!?(笑)
でもね、パンナコッタもブランマンジェも似たような物ですよたぶん。

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【パンナコッタ】
イタリアで生まれた生クリームを多めに使い、ゼラチンで固めに冷やし固めたもの。
【ブランマンジェ】
フランスで生まれたアーモンドミルクや牛乳をゼラチンかコーンスターチでゆるめに冷やし固めたもの。

= どちらも白くてプルプルした食感のスイーツである。
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制作もスイーツもディティールにこだわるタイプだと思っていたのに、
味覚は大雑把だったという事が最後の最後に発覚!
自身の仕事をクリエイターというよりはサービス業だと思いながら、
奇想天外なクソゲーを作って全国の子どもたちを楽しませ続けている寺谷さん、
本日はありがとうございました!


インタビュー:古舘 勝義(DIRECTIONS)
文・写真:木塚 幸代(DIRECTIONS)
イラスト:後藤 真奈(DIRECTIONS)

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