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2022.12.28

  • Interview

「コーポレートロゴデザインの裏話」草野剛×長江努 対談

「コーポレートロゴデザインの裏話」草野剛×長江努 対談

2022年からリニューアルされたディレクションズのロゴデザインと名刺のデザインを手掛けられたアートディレクター/グラッフィックデザイナーの草野剛さんとディレクションズ代表の長江による新ロゴデザインについての対談をお届けします。


草野剛

草野 剛
Kusano Tsuyoshi
アートディレクター、グラフィックデザイナー。
1973年生まれ、東京都出身。
グラフィックデザイン全般の制作を行う。
アスキーを経て草野剛デザイン事務所を設立。
武蔵野美術大学デザイン情報学科非常勤講師。
中央大学国際情報学部兼任講師。
コヤマシゲトと同人サークルCCMSを行う。
2015年から一般社団法人 JMAGクリエイターズ協会 の理事を務める。
http://www.kusano-design.com

長江努

長江 努
Nagae Tsutomu
1964年生まれ。ディレクションズ代表。
番組プロデューサーとしてNHK『デジスタ』『ビットワールド(天才ビットくん)』『シャキーン!』などを立ち上げる。
国際エミー賞グランプリ受賞の『星新一ショートショート』(2009)ではアニメ話数を全体プロデュース。
その後も『イヴの時間』『こびと観察入門』から『舞台ひらがな男子』『妖怪!百鬼夜高等学校』などアニメから舞台まで幅広くプロデュース。また、共同で開発したスマホ用ガジェット『i3DG/Palm Top Theater』は2010年のアルス・エレクトロニカにて入選を果たしている。

 


草野剛×長江努対談01

長江:ここ数年、ディレクションズがいろんな団体に属するようになって、他社のロゴと並ぶ場面が増えてきたんですけど、赤の背景に細い文字が乗っているロゴがパッと引きでみると何が書いてあるのかさえ分からない (笑) ということから、有名企業のロゴと並んでも存在感を放てる新しいロゴを作ってもらうなら、草野さんしかいないと思ってお声がけさせて頂きました。

DIRECTIONS旧ロゴ

※創業時から2021年12月まで使用していたDIRECTIONSロゴ

草野:自社ロゴを客観的に見つめることは、意外と難しいですよね。きっと皆さんのマインドが俯瞰して会社を見れる状態だったんですね。

草野剛×長江努対談02

長江:個人的には創業以来すっと気に入っていて、誰よりもこのロゴを色んな所に貼り付けてきたから愛着もあったけど、実はブランド一新しようという話が先に進行していて、「子ども番組のディレクションズ」というブランドから脱却するのであれば、思い切ってロゴも変えようと思って。そして会社としてそれだけの大きな帰路に立った時に、安心してお任せできるのは「イヴの時間」以来、要所要所で良い仕事をして下さった草野さんしかいないって思った次第です。

草野:遡れば2008年からお付き合いがありますからね。一緒にお仕事をしてない所でもディレクションズの名前を見ていたり作品に触れたりしていたので、僕の中にある情報と最初に伺ったお話とを併せながらディレクションズの新しいロゴの制作をしました。

 

 

リニューアルされたDIRECTIONSロゴの新しさとスタンダードさ


草野剛×長江努対談03

草野:旧ロゴで使われている色味より少し明るめの色にしたのは、明瞭な色味にすることによって清潔感を感じる表情になるのでは…と。そして、スタンダード・メジャーな彩色=わかりやすい色は、多くの方に受け入れていただける可能性が上がります。
「DIRECTIONS」のワードマークは、Helveticaという書体を使っています。普遍的で完成された姿に対して、長きに渡って討論が繰り返されてきました。何にでも信用が生まれちゃうとか…好まない意見もあります。ですが、その魅力はドキュメンタリー映画※になる程。有名な企業のワードマークで使用しているケースをあちこちで見かけます。
※「ヘルベチカ ~世界を魅了する書体」(2007年製作)

DIRECTIONSリニューアルロゴ

※2022年に新しくなった草野剛氏デザインのDIRECTIONSロゴ

草野:今回のリニューアルでたくさん提案した中からこのデザインを選ばれたのは、新しさを感じる表情とスタンダードを組み合わせつつ、時代に左右されないものを目指しているのかな…と感じました。

長江:自分も含めた社員一同に共通する生真面目さはもはや変えようがないけど、その一方でこれまで通り様々な挑戦はして行きたい、さらには著名な企業のロゴと並んでもスマートに個性を打ち出していけるみたいな座りの良さから、このロゴを選ばせて頂きました。

 

 

「世界観カンパニー」って何だろう?


株式会社ディレクションズ 名刺

草野:新しい名刺の裏面には、キャッチコピーの『a 世界観company』というフレーズがあります。こちら、説明やリクエストも無く、原稿が届きました。これは…と。「あなたも考えなさい」って引きずり出される感じがありました(笑)「世界観」って良いワードですね。

長江:ちょっと話は長くなるけど、ウチには子ども番組を作りたくて入社してきた社員が少なからずいます。でもスマホやタブレットが普及する中でゲームや動画に時間を費やす子どもが増えていて、その反動として子ども番組のシェアは年々少なくなっています。
仮にウチから子ども番組プロジェクトがなくなった時に、それがやりたくてウチに入った子たちは何を目指せば良いのか?そう思ったことが新ブランド構築の出発点でした。

そこから改めて “ディレクションズの強み” とは何なのかを幹部たちと半年掛けて突き詰めたんですけど、たまたまクライアントから言われた言葉がヒントになって「世界観の構築に長けている」という答えに辿り着いたんです。言われてみれば、確かに子ども番組を始め様々なコンテンツでボクらはユニークな世界観を築いてきたなあと。

そして「世界観作りのプロを目指す!」という目標なら、仮に子ども番組が失くなっても社員たちが長く追求できるかもと。そう思い、退路を断つ気分で名刺の裏に「世界観」というワードを入れてもらいました。名刺に入れてしまえばイヤでも説明義務が生じるだろうし、社外の人に毎度聞かれて説明しているうちに社員的にも血肉化するだろうなという目論見です (笑)

草野:本質を見ていれば子供だろうと大人だろうと変わらない。やりたい事をイメージ出来ている方が関わっているコンテンツはヒットに繋がっています。世界のあり方を捉えた発言ができる人って、やっぱり強かったなって思います。

草野剛×長江努対談04

長江:新ロゴを使い始めて半年になりますが、社員たちがクライアントにプレゼンするのを見てると、みんな結構違ったトーンのプレゼンをしてるんですよ (笑) それぞれの手法で異なるタイプの資料を作ってるんだけど、いい意味でスタンダードなロゴだからちゃんとフィットしてる。世界観という言葉も含め、ニッチに行き過ぎず幅が持てるようになったのも実はよかったのかなって。

草野:みんなの気持ちや情報を探し出してまとめることは創造性の一部だと思っています。
ニーズに寄り添うだけでは、既視感があるものが出来上がったりしてしまうことがあります。こうありたい!こういう景色が見たい!など、何でも良いですが、自分の思い乗っている作品の方が驚きが多く含まれてることが多かったなと思います。
「世界観」ってとても素敵な言葉で自由度が高いから、これからまた新たなディレクションズのスタイルを確立していくのでしょうね。

草野剛×長江努対談05

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