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2020.08.21

  • Interview

TVディレクターがマイクロインフルエンサーに!?
多趣味を活かした番組作り【 Creators Interview #05×塚田 努】

TVディレクターがマイクロインフルエンサーに!?多趣味を活かした番組作り【 Creators Interview #05×塚田 努】

「仕事もプライベートも今すごく楽しい。」と語る入社13年目のベテランディレクターは、実は社内で1番のSNSの使い手だった!!


Profile

塚田努

塚田 努
Tsukada  Tsutomu
2007年より在籍/Jカルチャー部 ディレクター
NHK Eテレ「沼にハマってきいてみた」、NHK WORLD「Kawaii international」を担当。
これまでにNHK BS「デジタル・スタジアム」、NHK Eテレ「デジスタ・ティーンズ」なども担当。

【目次】
1.「民俗学」との出会いが全ての始まりだった
2.40代になって定年したオヤジみたいな気持ちになって気づいた事
3.SNSやYouTubeを通して新しいことをどんどん吸収していきたい
4.何かにハマってる人たちに気持ちがシンクロするから楽しい「沼にハマってきいてみた」

 


古舘: 今回インタビューするに当たって、塚田さんのインスタを初めて見たんですよ。

塚田:社内のほとんどの人が知らないはずだから(笑)インスタでサンドイッチの紹介してたらライターの仕事をすることになって、副業申請したら社内の人にも知られちゃった。最初はキャンプ情報を発信するつもりでインスタを始めたんだけど、冬になってキャンプに行けなくなったから、キャンプ用に買ってあったホットサンドメーカーを使ってホットサンドの写真をアップしたら、割と反応が良くてどんどんフォロワーが増えて、楽しくてやってたって感じかな。

ホットサンド
ホットサンドを作るための研究を惜しまない塚田さん。
モットーは、“よりおいしくて”、より“より映える”。

木塚: フォロワー数があとちょっとで1万人ってなかなか身近にいないと思うんですけど社内にいたとは!フォロワー数が3,000〜7,000人くらいでもインフルエンサー的なことをしている人もいますけど、そういった話も来たりするんですか?

塚田:最近あんまりインスタに写真を上げてないから話が来なくなったけど、頻繁に上げてた時は、いわゆるインスタグラマーみたいな企業案件もいろいろ来て楽しかったよ。「ホットサンドメーカー、これ使ってください」とか、食材やスープや花が送られてきたり。この前は腕時計の案件が来て、何でサンドイッチなのに腕時計なんだ?ってあまりにも違うから断ったけど。
フォロワー数1万人ぐらいのマイクロインフルエンサーって結構いて、それ専門の広告代理店とかもあったりして、そこ経由で話が来たりするのよ。YouTubeはYouTuberの事務所みたいのがあるっていうのは知ってたけど、InstagramとかSNS専門の広告代理店があるとか、そういう裏側を知ると面白いなと思って。

古舘: 塚田さんのインスタを見ていて思ったのが、最初はそんなにホットサンドに詳しくなかったんですよね?

塚田:うん、詳しくなかった。

古舘: 「初心者です」って言いながら、すごい果敢にいろんなことをやってて。ゆで卵の挟み方を毎日いろいろ試したり。

ゆで卵サンドイッチ

塚田: 料理は元々好きで、やりだすと凝りたくなっちゃうっていうか、トライ&エラーで挑戦してたってところなのかな。でも、最近インスタは止めてて…

古舘: ああ、そうなんですね。何で止めてるんですか?

塚田: インスタって似たようなカテゴリーで続けなくちゃあんまり伸びないメディアだから、もっと色々やりたいと思ってYouTube始めたら、そっちに時間取られちゃって。インスタもまたやりたいんだけど、動画も面白いから、ちょっと今年はYouTubeやってみようかなって。

木塚:ダッチオーブンでパンを作る動画をYouTubeにアップしてましたよね?

塚田: 自分で焼いたパンでサンドイッチを作るっていうのをずっとやりたくて、ようやくそれができたんだよね。不思議なもので、初めてでも美味しく焼けちゃう。YouTubeとかで調べれば作り方が出てくるから、同じようにすればちゃんとパンが焼けちゃうのよ。

手作りカンパーニュ

 

「民俗学」との出会いが全ての始まりだった


木塚:塚田さんはずっと映像業界で仕事をされているんですか?

塚田:テレビ番組の制作に行きたいなっていうのがなんとなくあって、それでテレビに行ったって感じかな。

古舘:なんとなくっていうのは…?

塚田:大学時代はジャズバンドをやってる音楽が好きな学生だったんだけど、授業で「民俗学」に出会ったのがきっかけかな。僕の出会った教授たちは、マタギだったり猿回しだったり、自分の研究対象のフィールドを持っていて、そこで一緒に生活したり、インタビューするなかから日本の伝統的な文化を研究していたんだよね。当時はそういう学問があるっていうことにまず衝撃を受けて。
でも僕は「昔」じゃなくて「今」に興味があったから、現代的なテーマを選んで、いろんな人たちへのインタビューを通して社会や文化を読み解くようなことをやってた。そこから、インタビューや取材を仕事にできるのって作家かなと思ったんだけど、作家って就職先がないんだよね(笑)
それで、ドキュメンタリー番組の制作なら、そういうことを仕事に出来ると思って。

木塚:最初はドキュメンタリー番組の制作から入ったんですか?

塚田:とりあえず好きなドキュメンタリー番組を作ってるテレビ局に入れば何か知れるかもしれないと思って、大学院に在籍しながら派遣会社を通して、当時一番イケイケだった民放のテレビ局の制作に入ったんだけど、配属されたのが人気のバラエティ番組を制作している部署で、そこで働いてる人たちは面白かったし凄い現場だなと思ったけど、僕が思ってたテレビの世界とは全然違ったのね。
このまま流されて行くのはちょっと違うと思って、契約期間終了を期に辞めて、大学院卒業後は広告代理店に就職したんだよね。

木塚: ドキュメンタリー番組ではなくバラエティの制作に入って、広告代理店に就職ってずいぶん道を外れましたね…

塚田: うん。でも、3年しないで辞めた。なんか“物作り”に忘れ物しちゃってるところがあったんで。
それで知り合いが立ち上げた制作会社に転職したんだけど、そこはディレクターが自分でカメラを回して、編集して、ほぼほぼ1人で番組を作るっていうスタイルで、それを目の当たりにして凄いなと思って。
それで自分もショートドキュメントっぽい番組を担当して、取材してその面白さを伝えるっていうことが出来るようになってきたんだけど、番組が終わっちゃって。
そのあと、たまたま入ったのが立ち上げたばかりのディレクションズ。

木塚: ディレクションズに入社した当初に担当していた番組は何でしたか?

塚田: 『デジタル・スタジアム』っていう番組に配属になったんだけど、前職の数年間で積み上げて来た、自分で取材して番組を作るっていう事とすごいマッチしてて。
クリエイターたちのコンペの番組なんだよね。その当時はまだ映像表現の発表の場ってそんなになかったから、若い子たちが応募してきてプロへの階段を一つ上れるみたいな番組だったんだけど、やっぱりその瞬間に立ち合えるのが凄い楽しいし面白かった。みんなのぶつけたい思いを受け止めて、作品と一緒に魅力的に紹介するっていう、橋渡し的な存在なんだけど、それが性に合ってるなって。『デジタル・スタジアム』にずっと関わってきて、非常にいい番組に巡り合えたと思った。なくなっちゃったけどね(笑)

 

 

40代になって定年したオヤジみたいな気持ちになって気づいた事


塚田努インタビュー

塚田:僕は30代ではほとんど仕事しかしてなくて、テレビ番組を作る上での最低限のキャリアは積めたんだけど、40の時にふと「これでいいのか?」って定年したオヤジみたいな気持ちになって(笑)20代の時は、自分の思いとか、価値観とか、発見したことを伝えたい!表現したい!って思っていたけど、30代は仕事に忙殺されて、自分の趣味とか追い求めたいものとか表現したいこととかは、あんまり考えてなかったんだよね。でも、40代になった時に「あれ?何か違くねえか?人生も番組作りも、もっと楽しいものじゃなかったのかな?」と思ったんだよね。

木塚:そう思ったきっかけは何かあったんですか?

塚田:秋葉原系のカルチャーを番組で紹介したことがあって、でんぱ組.incのライブに取材に行ったんだよね。その時、ファンの人たちがめちゃくちゃ楽しそうで「ああ、なんてこの人たちは幸せそうなんだろう」って、自分も何か好きなことや楽しいことをしなくちゃなと思った。
その頃※『Kawaii International』っていう番組を担当してて、インスタやYouTubeがきっかけでブレイクした子たちをいっぱい見て面白そうだなと思ったし、10代、20代の子たちがやってるけど、これだったらオジサンの僕がやってもいいんじゃないかと思ってInstagramやYouTubeを始めたんだよね。
※「Kawaii International」…NHK WORLDで放送中のファッション、グッズ、ライフスタイルなど、日本のKawaiiカルチャーを世界に発信する番組。

塚田:あと、悔しいじゃない、仕事をしている中で
「どうせ塚田さん、インスタとかSNSとか分かんないっすよね」

「じゃあ、若い子の意見、聞こうか」ってなるのが。
でも、それっておかしくて、若い子=SNSに詳しいかって言うとそうでもない。
SNSって若い子も使ってるけど、インスタは主婦の方もたくさん活躍している。YouTubeだってオジサンYouTuberはいっぱいいるし。いろいろなんですよね。

 

 

SNSやYouTubeを通して新しいことをどんどん吸収していきたい


キャンプ01

木塚:YouTubeチャンネルにアップされている真冬のキャンプの動画が5万回以上も再生されていて凄いなと思ったんですけど、何故オンシーズンではない冬にキャンプへ?

塚田:キャンプ系の動画で「冬キャンプ」ってキーワードがあって、「冬キャンプ、楽しいぞ、楽しいぞ!」みたいな気持ちはあったんだけど。冬は家族ではキャンプに行けないし、あんまり出かけたりもしないから、ちょっと一人で遊んできても文句言われないかなと思って冬のソロキャンプに行ってみたら、めちゃくちゃ楽しくて。もうね、キャンプは冬だなっていう感じですね。
僕はそれまでキャンプの動画は撮ったことがなかったんだけど、一人で行くと結構暇なんですよ。料理はするけど割と時間があるので、ずっとボーっとしてるんだけど、動画を撮ったら面白いかなと思って。

キャンプ02

塚田:YouTubeチャンネルを始めたのは楽しそうだからっていうのもあるけど、YouTubeやりたいなっていうのは心のどこかにあって。でも「YouTube新規参入難しいぞ」とかいろいろあるじゃない?でもさ、やってみないことには何も分からないと思って、去年の12月から動画をアップし始めたんだけど、2月から新型コロナが流行り始めてキャンプに行けなくなって…ベランダキャンプの動画をアップしたりしてるけど、純粋にやりたかったキャンプ動画ってあんまり作れてないんだよね。
それで、実際にYouTubeチャンネルを始めてみて楽しいんだけど大変っていうか…僕は“キャンプYouTubeトレンド”には乗り遅れていて難しいのよ。

古舘:視聴数が伸びるか伸びないかは、運も大きい。

塚田:そう、視聴数が伸びる動画は伸びるのよ。で、そういうのがあるとチャンネル登録者数も伸びて…ゼロから始めて、広告を付けられる1,000人っていう一つの壁はクリアしてるんだけど、そこから続けていって1万人、10万人とかにいくまでチャンネルを伸ばせられるか?
やっぱり、みんなそこにエネルギーやお金もかなりかけてるんですよね。それには僕はかなわないけど、趣味としては続けられるから、5年、10年、自分の中の日記じゃないけど、スローペースでやっていこうかなって感じかな。

キャンプ03

古舘:塚田さんて、インスタとかYouTubeとかガンガン挑戦していくチャレンジ精神が凄いですよね。

塚田:時代は変わるからどんどん自分が変わっていかないと乗り遅れちゃうし、そういうことをやると、自分自身が新しい事をどんどん吸収できて面白い部分がある。だから、そういう意味ではSNSとかYouTubeとかやるのが、今ものすごく楽しい。
もちろん、自分の趣味の楽しみっていうところもあるけど、新しいメディアを肌で感じて、そこで何が良いか、悪いか、何がチャンスなのかって、自分と直接関係ないジャンルでもそういう視点で見られるようになって面白いなって。それが仕事に生かせる日がくるか、よく分からないけどね。
「面白い!」なんて言いつつ、来年はインスタもYouTubeもやってないかもしれないけど(笑)でもいいの。やめてもそれで感じたものは残るし、体感としてわかってるっていうのがやっぱり大事だと思ってる。

キャンプ04

 

 

何かにハマってる人たちに気持ちがシンクロするから楽しい
「沼にハマってきいてみた」


塚田:今、僕はEテレで放送中の『沼にハマってきいてみた』っていう番組を担当してるんだけど「これが好きだ!これを極めてて、これをやってるときは、ほんとに楽しくて、もう最高なんだ!他の人は分かってくれないかもしれない、でも僕はこれが好きで、生き甲斐なんだ!」みたいな人たちを取材して紹介するんだけど、気持ちが分かるのよ(笑)
だから僕も、番組の企画提案に自分の趣味的なものを落とし込んでいて。和太鼓の演奏を見て衝撃を受けたら「和太鼓」の企画をやったり。
あと、実は去年キャンプと一緒に渓流釣りも始めてて、その延長で「釣り」の企画をやったり。番組でも渓流釣りにハマってる高校生を紹介したかったんだけど、見つけられなかったから、もともと興味があった深海釣りをメインの企画にして。東京湾の深海まで行ってカメラ回してきたよ。本当は釣り竿持ちたかったんだけど(笑)「鮫、釣りてぇ」なんて思いつつ一生懸命撮影する。

塚田努インタビュー
「あ、深海の時は俺、カメラ持って行ってないか。」

塚田:自分の強いジャンルを番組の制作にも生かしているっていう感じかな。そのジャンルに詳し過ぎちゃうと、主観が強すぎて一般的な紹介がしづらくなる面もあるからメリット、デメリットがあるけど、そんなふうに楽しく作ってる。

“番組作り”っていろいろ方法はあると思うんですけど、僕の場合は、今、塚田 努の個人の感じ方とか、好きなものとかを取り入れて制作してる。何かにハマってる人たちにちょうど今、気持ちがシンクロするから、やっていて凄い楽しい。40代になって面白い番組に出会えてよかったなって楽しくやってます。

塚田努インタビュー
1時間半の間に水を3本飲んで、たくさん話してくれた塚田さんでした。


インタビュー:古舘 勝義( DIRECTIONS/コネクティブラボ部長)
編集・写真:木塚 幸代( DIRECTIONS/コネクティブラボ)

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