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2019.09.13

  • Interview

関係者泣かせの剛腕ディレクターが語るこだわりの理由【 Creators Interview #02×宇野 丈良】

関係者泣かせの剛腕ディレクターが語るこだわりの理由【 Creators Interview #02×宇野 丈良】

社員の取組みや制作に対する思いをお届けするDIRECTIONS社員インタビュー第2回目。
一部では“関係者泣かせ”と言われるほど作品の細部に対するこだわりを貫き、最高のクリエイティブを生み出すことで定評のあるディレクター 宇野 丈良にNHK Eテレの子ども番組『天才てれびくん』の双方向演出、CG表現のこだわりについてや、遅刻と滑舌の悪さの理由までいろいろな話を伺ってみました!


 

Profile
宇野 丈良 Masura Uno
2004年より在籍/インタラクティ部 部長
NHK Eテレ「天才てれびくん YOU」ディレクター。
前身の「Let’s天才てれびくん」より双方向システムを使った番組の開発を主導する。
合成を多用したグラフィカルな子供番組のほか、音楽番組も手がける。NHK Eテレにて「天才ビットくん」「スコラ坂本龍一音楽の学校」「ムジカ・ピッコリーノ」などを担当。
東京生まれのフランス育ち。

古舘勝義 古舘 勝義    Katsuyoshi Furudate
2007年より在籍/コネクティブ ラボ部長
NHK Eテレ「ビットワールド」日本テレビ「アイキャラ」などでディレクターを担当。
YouTubeでもコマ撮りアニメ「こびとす」を開発し、累計視聴数3500万回を達成。
現在はメディアミックスプロジェクト「SIX SICKS」で謎解きイベントに関わる。
最近インストのヒップホップを聴き始めてJディラにハマっている。青森生まれの横須賀育ち。

 

kizuka 木塚 幸代  Yukiyo Kizuka
2018年より在籍/コネクティブラボ webディレクター 兼 広報(仮)
IT系企業を10年間渡り歩き、なぜかDIRECTIONSに入社する。
現在は某TVドラマのSNSプランニングと運用を担当。
元 2次元美少女アイドルゲームオタク。現在の趣味はランニングと保護犬の動物愛護ボランティア。藤沢生まれの茅ヶ崎〜新潟〜藤沢育ち。

 

【目次】
1.遅刻王「本日の遅刻理由」
2.社会不適合者みたいな気分の大学生が選んだ就職先
3.視聴者参加を『天才てれびくん』の柱にして
4.『天才てれびくん』CGへのこだわりは半分●●だった!?
5.VRの楽しさを伝えるには“ゴーグル”よりも“ホロレンズ”
6.原動力は“社会貢献的な気持ち”

 

遅刻王「本日の遅刻理由」


unointerview_01インタビュー開始予定時刻は正午12:00。

30分遅れるって言ってたのに
unointerview_02
1時間以上経過しているんですけど…。

宇野丈良(10年以上前の年末の納会で流すために作られたVTRのスクショを入手することができました。)

少年少女に夢を売る
演出のデパートメントの人が
来ない…

 

そして、待つこと1時間15分。
宇野丈良
\本日の主役、すごい笑顔でご到着/


大事な予定がある時は、宇野さんを起こすために同じ班の誰かが電話をかけまくって起こすことが恒例になるほどの寝坊遅刻王。このインタビューも遅刻王の洗礼を受けるところからスタートしました。

木塚: 宇野さんやっぱりやってくれましたね〜(笑)。

DIRECTIONS Creators intervie01

古舘今日のインタビューも1時間15分の遅刻でしたけど、何でそんなに頻繁に寝坊するんですか?

宇野: 理由は2つあって、時間にルーズなのはたぶんフランスで育った時の感覚が…
パリ時代の感覚が少しあるんだと思う(笑)。

木塚: 「フランスで育った」というのは冗談ですよね!?ちょっとどっちか判別がつかないんですけど…。

宇野: いや、本当だよ。

木塚: 失礼しました(笑)。フランスで育ったのは何歳までなんですか?

宇野: 5歳〜12歳までパリだから、たぶん声帯系や口の回りがフランス語を喋るようにできちゃっているから、いざ日本語を喋ろうとすると、何か滑舌が悪いみたいになるんだよ。

古舘 遅刻するもう1つの理由は?

宇野: アラームが鳴って起きるけどすぐ二度寝して分からなくなるとか、記憶に残ってないことが結構ある。

木塚: 夜中にゲームをやり過ぎて起きられないとかではなかったんですね。

宇野: そういうのもあるけど、逆にそういう方がちゃんと起きてる。
普通に寝た時や睡眠時間が取れる時の方が寝坊しがちで。「もう2、3時間しか寝られない!」という時の緊張感だと何とか起きられたりするから。

木塚ちなみに、昨夜は何をされていたんですか?

宇野: 昨夜は韓国ドラマを…。『シグナル』というやつを観てました。刑事ドラマなんだけど、20年前とトランシーバーで通信ができて、その事によって過去が変わって、現在もその影響で変わるんだけど、それがまたある人を助けたら別の人が死んじゃったりとか、自分たちの意思で色々変えていくことが良いのか悪いのか、結局上手いこと行かないみたいなジレンマに直面するというドラマで…お勧めです。

 

 

社会不適合者みたいな気分の大学生が選んだ就職先


木塚宇野さんは、なぜ映像業界の仕事を志そうと思ったんですか?

宇野: 7、8歳くらいの時に『スター・ウォーズ』とか『インディー・ジョーンズ』とかが出てきて、ポスターに監督の名前がジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグとか載っていて、“監督”という仕事があるんだというのを知ったんだよね。
それまで小学生が監督の名前で映画を観るということがなかったんだよ。たぶんジョージ・ルーカスとかスピルバーグが最初だったと思う。高校生になってからはジム・ジャームッシュという渋い監督がいて、ああ、いいなと思って。
それで、ジム・ジャームッシュの映画に出ているジョン・ルーリーという俳優でサックスを吹くミュージシャンがいるんだけど、そのミュージシャンが釣りをやるという番組を作っている日本の制作会社があるんだって新聞か何かで知って面接を受けたんだよね。

木塚: 最初から子ども番組を作りたいというわけではなかったんですね。

宇野: 『ウゴウゴルーガ』は好きだったよ。遅刻癖もそうだけど、大学生の頃は社会不適合者みたいな気分だったから(笑)。どうせ俺なんかまともに就職なんかできやしないと思っていたから。でも、『ウゴウゴルーガ』とかああいうものだったら何か仕事としてやれるかなというのは、ちょっと思っていたかな。

古舘どんな経歴で子ども番組にたどり着いたんですか?

宇野: 最初は音楽番組を結構やってたんじゃないかな。
音楽編集とかライブの段取りをしたりしていて、当時は井上陽水さんの仕事とか音楽系の仕事が多かった。あとは『世界・わが心の旅』っていう番組で、明治時代にロシアに行った日本女性がいて、その跡を吉永小百合さんが追うみたいな企画でロシアに行ったり。その時は制作費として現金とトラベラーズチェックも含めて300万ぐらい持って行った記憶がある。300万って、当時の俺の給料と同じぐらいだからね。

古舘: 年間の(笑)。

宇野: 年間の給料より高かったかな(笑)。これで1年間遊んで暮らせるなと思ったよね。経歴は大分昔だからもうあまりよく覚えていないけど、最初の5〜6年は色々やっていて、子ども番組は『天才ビットくん』が最初です。

 

 

視聴者参加を『天才てれびくん』の柱にして


DIRECTIONS Creators intervie宇野丈良

古舘『天才ビットくん』から始まって『ビットワールド』『ムジカ・ピッコリーノ』など子ども番組を演出してきて、2014年からは『天才てれびくん』に関わっているんですよね。『天才てれびくん』ではどんなことをやってるんですか?

宇野: ちょうど大改定のタイミングでチームに入って、「生放送」プラス「データ放送」で視聴者参加型の「双方向演出」を中心にしようみたいな僕らのアイデアが取り入れられて。そこにCGのモンスターを絡めるのがいいんじゃないかということで、月曜日から木曜日までを一貫したストーリーでくるめるという形になった

古舘何でそういうふうに変えたんですか?

宇野: 何か架空の世界があると、みんなが介入している気分になりやすいんじゃないかな?
フィクションだったら方向転換というかストーリーに視聴者が関与していくことも受け入れられるから。

古舘: フィクションと双方向を組み合わせて、視聴者に決めてもらうみたいな。

宇野: そうそう、見ている人がその世界に介入するということだね。
それがやっぱり印象に残るんだよね、ほかの放送と違って。双方向番組に参加したってことは圧倒的に経験として残るから、ただテレビ番組を見たっていうよりも体験になっていると思うよ。

古舘宇野さんはそういう「双方向演出」の感覚をどうやって体得したんですか?

宇野: 2008年くらいに、当時すごくゲームが好きで、RPGとかでキャラクターを通してストーリーを追うんだけど、まあ明らかに小説とか読むより能動的なんだよね。何時間も同じキャラクターを操作して、そのキャラクターが死んだりすると、「ああ、しまった、悲しい」みたいになって。
そのストーリーの没入感というか、一人ひとりの登場人物に対する思い入れも含めて、やっぱりゲームのほうが全然小説や映画よりかは思い入れが出てくるわけ。で、そういう体験が放送でもできるんじゃないかなというのはちょっと思っていた。
ゲーム世代というか、そういう感覚がある人たちを相手にして。プレイしてストーリーがあってまたプレイしてストーリーがある、そういうストーリーの分岐点が来たらVTRが流れるという、ゲームと同じような構造にして。それで、当時演出をしていた「ビットワールド」で、インターネットの脱出ゲームと連動した生放送を企画して。主人公が脱出しなきゃいけないということを、視聴者が切実に、自分が脱出しなきゃいけないぐらいの切迫感を持って参加できるような演出にしようとして。
そういう発想は、多分ちょっと新しかった。

 

『天才てれびくん』CGへのこだわりは半分●●だった!?


古舘今回、宇野さんにインタビューしてみたいと思った動機の一つに『天才てれびくん』のバーチャル表現があって、なんか番組を見た時に、すげえな、なんでここまでやってるんだろうって、ちょっと意味がわからなくなって。

宇野: でも、バーチャル表現って生っぽいな、イベントっぽいなっていうのは見ている子どもたちにはうっすら伝わっているのかも知れないけど、大人から見ると、それどうせ合成でしょうみたいに片づいちゃって。これが生放送であること、リアルタイムであることの凄さみたいなことはほとんど伝わってないと思う。

古舘その伝わりにくいリアルタイムのCG表現にこだわって挑戦しているのは何でなんですか?

小林半分趣味ですよ。

古舘: え?

※突然カットインしてきた小林さんは宇野さんと一緒に『天才てれびくん』を制作している弊社スタッフ。
補足などをしてもらうため、インタビューに立ち会ってもらっていました。

小林: 半分趣味なところはあると思います。

古舘: 半分趣味?(笑)

宇野: いやいや、だから、それは子供たちが没入するための手段であって・・・・・・

古舘: 言い訳っぽい(笑)DIRECTIONS Creators interview宇野丈良

宇野: いや、違う。何言ってんだ(笑)。いやいや、ディレクターの趣味って、ちょっと勘違いがあるけど、
要はディレクターの趣味嗜好が、視聴者にとっておもしろいと思えることが何より大事で。それは作品をよくするための趣味嗜好だけを選び取っているから。

古舘: 自分の中の趣味もいろいろあるけれど。

宇野: いろいろあるけど、その中で『天才てれびくん』を見ている子どもたちのために、こういうのがいいんじゃないかというのを提示しているから、それを趣味嗜好と言われても。

古舘: まあまあ、そうですよね。個人的な趣味を通らないと作品は血肉化しないですからね。

宇野: そうそう、そうそう。だから、自分がゲームとかをやっていて、ああ、こういうリアリティーが絶対楽しいと。
今のゲームって、歩くと草が風になびいているし、踏むとちょっとベタッとなる。昔はそんなリアリティーはなかった。今は突っ立っているだけで、何か空間として相当リアリティーがある。ただぼんやりしているだけで、体験として成立している領域になりつつあるから、そういう感覚をちょっと放送に持ち込んでいる部分はあるよ。実際はテレビ画面を見ているだけなのに、風が吹いているような、滝が流れていて、そこをちょっと涼しさみたいなものが伝わってくるみたいなね。

 

 

VRの楽しさを伝えるには“ゴーグル”よりも“ホロレンズ”


古舘: 最近、僕もVR空間でのイベントを制作したんですけど、VRってユーザーがそんなに広がってなくて。で、それって体験してない人におもしろさが伝わってないからだと思っていて。
それで『天才てれびくん』を見たときに、これってVRのおもしろさを伝えるヒントになるんじゃないかなと思ったんですよね。VRでの体験を映像化して、それを伝えられるノウハウがあるというか。

DIRECTIONS Creators interview宇野丈良

宇野: まあ、『天才てれびくん』では今年からホロレンズを使っているけどホロレンズがすごくいいなと思ったのは、やっぱりカメラで写しても出演者の目が見えるんだよね。
うっすら表情がわかる。それが大事なんだよな。VRのゴーグルだと隠されちゃってるじゃん。
見ている人がどういう表情をしているかわからないんだよ。
※ホロレンズ:サングラス型で、現実空間の上に仮想空間を重ね合わせた複合現実が体験できる機器。

要は、人って、笑っているからこの人は楽しいんだなって気づくじゃん。笑っている人がいっぱいいるから、おもしろそうと思って自分もやるわけじゃん。

古舘: うん、うん。

宇野: それがたぶんVRは閉じちゃっているんだ。「私、楽しいです」ってVRをつけている人がすごく思ったとしても、その笑っている顔は外から見られない。
ホロレンズがいいなと思ったのは、あ、この人楽しそう、この人怒っている、というのをホロレンズごしにでも感じられるから。要はホロレンズの場合、同じものを見ていると共通体験になるから。あ、自分だけじゃないんだ、みんな見えてるんだ、同じものを見て、怒ったり笑ったりしているんだということを体験して。それがたぶん『天才てれびくん』で感じてもらいたいことなんだと思う。

 

 

原動力は“社会貢献的な気持ち”


DIRECTIONS Creators interview宇野丈良

木塚宇野さんは、もし番組の演出の仕事をやっていなかったとしたら、自分はどんな仕事に就いていたと思いますか?

宇野: それは考えたこともないけど。医者がいいなと思っていたけど、そこまで勉強できないので。弁護士もいいなと思っていたけど、そこまで勉強できない。

古舘: 宇野さんが医者と弁護士がいいなと思うのは意外ですね。モチベーションがちょっとよく分からない(笑)。

宇野: 医者って根源的な感じがしない? 命に関わるという。生活において。社会貢献という意味でも。
自分は一人だと別に何もしたくない。自分のために何かするとか、根本的にそういう発想はそんなにない。
人の役に立つ仕事の方がいいなというので医者とか弁護士とか言っているけど、根底にはそういう所が少しある。
だから、番組を作っていてもそういう社会貢献的な気持ちがある。
見てる人のためとかを言い訳にして原動力にしているから、自分のために作っているとなるとちょっとサボッちゃうからね。世の中には自分のために作っていて決してサボらない人たちがいると思うけど、僕自身はたぶん自己実現、自己表現のために動くほどの動機やモチベーションはない。そこら辺が一般的なクリエイターと自分がちょっと違う所だと思う。自己実現欲求が意外と低い所が。

DIRECTIONS Creators interview宇野丈良

古舘: 自分のためではなく、誰かのためというのを原動力にしているということですけど、宇野さんと一緒に仕事をすると結構振り回される人もいるじゃないですか。

宇野: ああ、いるね。いると思うよ。

古舘:「何でここまでこだわるの!?」って。

宇野: そうそう、多分いるかもしれない(笑)。

古舘: だから、“自己実現ではない”というところのニュアンスが・・・

宇野: いや、ものを作っていると、これいいなと思えるレベルと、こういうのちょっと良くないよねというレベルはあるんだよね。そのちょっと良くないというレベルだとまずいんだよ。

古舘: そこにこだわるのは自己実現ではないと?

宇野: いや、わからない。そこを自己実現と言い換えることも可能かもしれない。それは堂々めぐりになっちゃうから(笑)。

古舘: わかりました(笑)。

木塚: ではそんな感じで今日はこの辺で締めたいと思います。ありがとうございました。

宇野: はい。どうもありがとうございました。

DIRECTIONS Creators interview宇野丈良

今日も究極のこだわりで『天才てれびくんYOU』を制作するために、
笑顔で手を振って立ち去って行った宇野さんでした。

そして後日…

『もうちょっとカッコつけた写真を載せて欲しい』
という要望と共に送られてきた写真がこちら。

大手町辺りにあるお堅い企業のサラリーマンの軍団の中に紛れ込めそう…。


【DIRECTIONS社員インタビュー】

社員インタビュー01

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